トライリンガル目線での英語!子供の育て方 バイリンガル日記

国際結婚し長い海外生活を経た筆者の目線で、英語(多言語)や子育て、音楽を主なテーマとし、役立つ情報や社会への想いを綴るブログです

ドビュッシー版画の難易度は?グラナダの夕べの弾き方も解説!

ドビュッシーピアノ曲のなかでも人気の高い曲集「版画」。パゴダ(塔)、グラナダの夕べ、雨の庭の3曲からなる版画ですが、ドビュッシー中期以降の作品だけに、抽象的で譜読みが複雑、とっかかりが大変な作品です。

あまり弾き方解説を見かけないので、今回は曲集のなかの「グラナダの夕べ」の弾き方と相対難易度を解説します。

 

別記事でピアノ曲の難易度について取り上げてみたところ、曲名+難易度でかなり検索されています。モーツァルトの次に検索されるのがドビュッシーの版画なので、気になる方が多いようですね。

本来、難易度は人によって感じ方が違うので数字だけでは表せませんが、この記事では弾き方を解説しながら、こういうところが難しいから難易度はこのくらいという書き方で、難易度解説としようと思います。

 

言葉で伝えるのがかなり大変で、ピアノ曲関連の記事については当初迷っていました。

思ったよりも難易度解説の反響が大きいので、また書いてみようと思います。

 

 

ドビュッシー

スペインと中東の両方をイメージした「グラナダの夕べ」

版画の3曲はそれぞれ別の国のイメージから造られており、2曲目のグラナダの夕べはタイトル通りグラナダ(スペインにありながらイスラム文化の名残りある街)をイメージしてかかれています。

アルハンブラ宮殿のある場所というと分かりやすいかも?。


Giuseppe Albanese plays Debussy's Estampes La soirée dans Grenade 版画より グラナダの夕べ

 

 聴いているだけで温度や空気感が違ってきませんか?

暑くモワッとした空気に包まれるイメージがあります。

版画の3曲のなかでもロマンティックで、メロディーラインも分かりやすくて、情景がハッキリ浮き上がる曲だと思います。

スパニッシュギターやフラメンコのカスタネットの音をイメージして書かれたとハッキリわかる部分があります。

 

他にアラビア風の音階も出てきますので、アラジンに出てくるような中東の雰囲気のイメージも役に立ちます。

 

実際にグラナダに行った方の旅行記なんかを参考にされても良いと思います。


【スペイン🇪🇸旅行】世界遺産アルハンブラ宮殿① イスラム芸術の結晶に終始感動しっぱなし!【Part 3】

イメージ湧きましたか?

では、さっそく弾き方を見ていきましょう。

 

イメージを大切にしながら丁寧に楽譜を読む

ここからは弾き方を解説しますが、楽譜がないと説明が困難なため、Petrucci Music Libraryより著作権フリーの無料楽譜を使って説明していきます。

グラナダの夕べ

まずあれ?と思うのは最初の用語ではないでしょうか。

フランス語です。

多くの楽譜はイタリア語で書かれているのでフランス語で長い文だと戸惑いますよね。

 

ハバネラのリズムが常に続く

この意味は

「ハバネラのリズムで」

Commencer lentement dans un rythme nonchalamment gracieux

(気取らない優雅なリズムでゆったりと始める)です。

5小節目だと右手ドの音で出てくる「タータタタ」 、このハバネラのリズムがこの曲のモチーフとなっています。

ときどき切れる部分もありますが、ほとんど継続して続いています。

 

冒頭の部分は左手に持続される低音ド(C♯)が出てきます。

低音が切れないようなペダルの踏み方をすると良いです。

ハバネラのリズムそのものは一定にしなければいけませんが、そのなかで単調すぎないように、上に上がってく音の動きを感じるように、これから始める何かを予期させるような感じにします。

 

ピアニッシモの扱い

曲のなかにPPPやPPがよく出てきますが、すごく小さくするというというよりは、曲全体を考えた時に、曲の中で最も小さい、この部分よりは少し大きいと考えた方が実際に弾くときに分かりやすいです。

 

鍵盤を手にぴったりと着けた状態で、音量はピアノやピアニッシモでも芯のある音を出します。

 

アラビア風の旋律

7小節目から登場するアラビア風の旋律は、イスラムの女性の妖艶さを感じるような雰囲気です。こういう単純なところを魅力的に弾くことで、曲の良さをより堪能できるようになると思います。

 

スパニッシュ(フラメンコ)ギターのフレーズ

 

版画

1ページ目のTempo guistoのところから、早速スパニッシュギターをイメージしたフレーズが登場します。

とても難しい部分なのですが、練習してスパニッシュギターらしくなってくると、弾いていて楽しい部分です。

スパニッシュ(フラメンコ)ギターとは、こういった雰囲気のものです。


Malagueña - Flamenco Guitar - Ben Woods

ネックなのは右手の和音で、この分厚い4和音をしっかりひきながら、くっきり高音のメロディーを歌って、ギター風の雰囲気に仕上げる・・・

こういう箇所が曲中に3か所出てきますが、ここはは本当に難しいです。

この曲を弾くか迷っている場合は、まずここを弾いてみるといいかもしれません。

これができそうならこの曲は弾けるとも言えます。

手が小さくてキツい場合、右手の和音の音は目立たない箇所を少し抜いてしまうのも手なのかもしれません。

他にも和音の箇所はたくさん出てくる曲ですが、このギターの部分が一番弾きにくいと思います。

 

ルバートは?

グラナダの夕べ

次のTempo rubatoの部分は、実際にはルバートというより、歌い方が比較的自由というように考えます。少し怪しいような、不安を感じるような雰囲気にする感じで、ショパンのようなルバートはしません。

右手のタイの音をよく感じて弾くと良いです。

ここの左手でもハバネラのモチーフは続いています。

 

 魅力的なメロディの中にいくつもの細工が

グラナダの夕べ

 

Tres rythmeの下のフランス語は、

en augmentant beaucoup「だんだん強く大きく」の意です。

個人的にこの部分は鐘のイメージで、この曲のなかで最も魅力的と思う部分です。

ffの部分のテーマはのびのびと、堂々とした気分で弾きます。

右手に物理的に保持不可能なメロディの音がありますが、ペダルも踏んでいるので、ここはまるで手を離していないかのように、たっぷりメロディを歌うことでカバーします。

 

 

オクターブの旋律のなかで動く和音の流れをしっかり感じながら弾きます。

左手ではここにもハバネラのリズムが形を変えて登場するので、忘れないようにちゃんとリズムを聴きながら弾きます。

右手の内声の和音はハバネラのリズムとぴったり合うようにします。

 

フランス語の訳し方に注意

グラナダの夕べ

Tempo1 の部分。転調して曲の雰囲気が変わる部分です。

avec plus d'abandonとかかれていますが、このフランス語の捉え方が結構厄介なので、誤った訳でとらえないよう気を付けてください。

英語ですとwith more abandonment となり、直訳すると、「さらに無造作に」という意味ですが、無造作にという日本語のまま理解してしまうと間違いが起こります。

 

abondonment には気まま、奔放と言う意味もあり、曲のこの箇所では、

「できるだけ、ざっくばらんに」という捉え方が良いです。

ざっくばらんにというのも、ちょっと分かりにくいですが、ちょっとおどけたような可愛さ、自由さといいますか・・・

「形式的にならず、カジュアルな雰囲気で」と考えても良いと思います。

この指示はフランスの作曲家ならではですね・・・

 

これは決して音価を適当にするという意味ではありません。

16分音符と8分音符、3連符の音価を忠実に守ることで、自然と雰囲気が出ます。

3連符のところは自然にルバートしているように聞こえます。

きちんと弾くことで雰囲気は後からついてきて、思わず踊りだしてしまうような楽しさのある部分です。

調合が多く譜読みは厄介で、オクターブも出てきますが、黒鍵が多いので楽譜の見た目ほどの弾きにくさはありません。

高音を出しつつ、各声部をよく聞きながら弾くと良いです。

 

声部の弾き分けが大変

グラナダの夕べ

この少しあとに出てくるのですが、画像2小節目の部分は、弾き分けがかなり難しい部分です。左手で2和音の旋律を弾きながら、同じ音域にハバネラのリズムがあります。

右手にも4和音の旋律があり、目立たない部分でありながら、ここはかなり苦労した箇所です。

急にピアニッシモになり、音色を変えて弾きたい部分です。

左ペダルも踏むと良いです。

 

グラナダの夕べ

さらに一段下に出てくるこの部分ですが、右手の3連符シレシレーシーのテーマに対して、次の小節の左手3連符、レファソミーソーが応答となっています。

この次の小節でも同じことが繰り返されるので、ちょっと注意して弾いてみると良いです。

 

3段譜が登場!跳躍を外さないように練習

後ろから2ページ目に3段譜が登場します。

これはぱっと見どうやって弾くの!?と思いますよね。

グラナダの夕べ

右手の和音はハバネラのリズムになっていますが、これはパターンが決まっているので、早いうちに完全に覚えてしまった方が左手に集中できます。

 

下の2段を左手だけで弾きます。

メロディーラインが左手にあるのですが、そのメロディをペダルで伸ばしているうちに、ぐっと下のミ(E)に飛んでまたメロディに戻ります。

Eを弾いて戻った時の和音をきちんととる練習をすると良いです。

ちょうどフレーズの切れ目で飛べるようになっているので、外しさえしなければちゃんと繋がります。

 

カスタネットの音をピアノで再現

3段譜が終わると次はフラメンコのカスタネットを模倣している部分が登場します。

グラナダの夕べ

Leger et loinrain →軽く、遠くで鳴っているように

la ♩=♪ de la mesure precedente →♩は前の♪に相当する

 

単純に考えるとここは倍速になります。

3連符がとろころどころ混じっていて、この通りに弾くと自然にルバートがかかっているように聞こえるように書かれています。

これは中間の「ざっくばらんに」の部分と同じ書法ですね。

 

これまでの部分とは全く弾き方を変えて、まるで打楽器をたたいているように弾きます。軽くとありますが、表面だけで弾くのではなく、芯まで弾くような感じと思います。

遠くで鳴っているように聞こえるよう、がちゃがちゃとならないように弾くのがこれまた難しい箇所です。

グラナダの夕べ



その後のTempo Iを挟んで転調した同じ部分がもう一つでてくるので、対比をしっかりさせたいところです。

TempoIは以前にでてきたメロディーを幻想の中で思い出しているような、夢心地な雰囲気です。ここも音価を守ると自然と雰囲気が出ます。

 

最後は手の交差あり!ハバネラのリズムは高音域へ

 

グラナダの夕べ

最後に手を交差させて弾く部分がでてきますが、これは楽譜の指示通り弾けば意外とさっと弾けます。

m.g.→左手で弾く m.d→右手で弾くです ドビュッシーだとこれもフランス語になってますね。

ハバネラのリズムは最後は高音域にしつこく登場します(笑)

 

最後の段だけ3段になっていますが、一番上の段と一番上のリズム音を右手、2段目と3段目を左手で弾きます。

真ん中の段のソーファ ソーファーーーという音がメロディーラインなので、そこをよく聴いて弾くと良いです。

 

グラナダの夕べの難易度は結局!?

ここまで解説してきましたが、難所も多く、表現することもたくさん、上級レベルの曲ということは間違いありません。

ただ、演奏時間は約5分、楽譜は約6ページなので、10分ほどの大曲と比べたらそこまでではないです。

テクニック面では分厚い4和音の連続と、最後の3段譜の跳躍を攻略すれば、細かいことを言わなければとりあえずは弾けます。

和音を掴む箇所が多いので、分厚い和音ががっちりつかめる手の大きさがあれば、体感難易度は下がると思います。

ゆったり歌ってひく部分もあるので、ロマンティックな曲が好きな人に向いている曲だと思います。

 

向いている人

ドビュッシーの曲を弾いたことがあり、ドビュッシーの曲が好きな人

○手が大きめ、または和音を弾くことに抵抗がない人

○ロマンティックな曲、異国情緒あふれる曲が好きな人

○場面変化の多い曲を弾きたい人

○5分程度の曲で弾きがいのある曲を探している人

向いていない人

ドビュッシーの和音に慣れていない人

○譜読みがややこしいのが苦手な人(少しずつでも読めばOK)

○跳躍が苦手な人(練習すればOK)

○どうしても和音がつかめない人(練習すればOK)

 

ドビュッシーに慣れていないだけの場合、アラベスク、ベルガマスク組曲、ピアノのためになどで、和音に慣れておくとぐっと弾きやすくなると思います。

まとめ

実際に弾いた上で書いており自分で書こうとしたにも関わらずかなり大変でした・・・。人によって解釈は幾通りもあると思いますので、あくまで一例ということで読んでいただけたら幸いです。

 

長すぎることなくちょうど良い長さにも関わらず、たくさんの魅力が凝縮されて詰まっている曲なので、迷っている方はぜひ弾いてみてください。

グラナダの夕べもそうですが、弾いていると情景が浮かんでくる版画の中の曲は、とりこになる魅力があります。

内容が濃いので弾けば弾くほど発見もあります。

 

Petrucci Music Libraryの無料楽譜で試しに弾いてみるのも良いですが、研究された弾きやすい指使いが書かれた楽譜を使ったほうが楽です。 この楽譜は指使いも無理がなく、映像や喜びの島、練習曲集も収録されていて便利です。

 

 

 

モーツァルトの難易度についてはこちら

www.sararalife.work