「値段じゃない」店員は絶対言わない!子供に電子ピアノを買うとき本当に狙うべきピアノは?
子供に買う電子ピアノをみにいくと、電気屋・楽器屋の店員さんは、そのとき売りたい商品や、高価格の商品を勧めてきます。販売するのがお仕事なので仕方ないですが、完全に鵜呑みにしているとお金ばかりかかって得るものは少なくなってしまいます。
マンションなどでアップライト(アコースティック)ピアノがどうしても置けない場合、子供がピアノを習う時に電子ピアノを用意するケースは多いですよね。
「子供へピアノを買う=多少高くても良いものを買いたいだろう」という前提があるため、店員さんも強気で販売してきます。
そうしたとき、どうしたら賢い選択ができるのか、以前から一度記事にしたかったので、この機会にまとめてみます。
- 電子ピアノを買う状況とは?
- そうはいっても住宅事情もある!
- 電子ピアノは高ければ良いのか?
- 子供の電子ピアノは何を重視して選べばよい?
- ヤマハの場合おすすめ電子ピアノはCLP(クラビノーバ)
- カワイの場合のおすすめはCNシリーズ
- カワイのCAシリーズは木製鍵盤でもお手頃
- 子供におすすめの電子ピアノは?結論→高すぎる電子ピアノは×
記事に説得力を持たせるため、前置きが長いです。
電子ピアノを買う状況とは?
電子ピアノは代換ピアノ
習い事としてピアノを習い始める場合、本当であればアコースティックピアノ(アップライト(縦型)ピアノかグランドピアノ)を準備したほうが良いのは周知の事実です。
大人が嗜みとしてピアノをするケースはまた別ですが・・・。
子供の場合は、毎月月謝を払って、毎週教室に通い、毎日練習することを考慮すると、本格的にするつもりはないケースでも、アコースティックピアノで弾き方を習ったほうが何倍も得るものがあります。
電子ピアノでも指の動かし方や、楽譜の読み方、音楽のルール、左右別に手を動かすこと、などは習うことができます。
しかし、「音の出し方」、「どう弾いたらどのような音がでるのか」「それを考慮した上での弾き方」を習うことは困難です。
生の音を出せない・聴けない状況では、これらをたとえ教えてもらったとしても、家で確かめられないため理解ができません。
ということは、ピアノを習っていても、この点については習えない、ということになります。
電子ピアノはデザインもピアノらしいものが多く分かりにくいですが、このようなエレキバイオリンをイメージすると分かりやすいです。
ヴァイオリンを最初に習い始めるとき、このようなエレキヴァイオリンだったら・・・
指の動きや簡単な弓の動かし方なら習えそうですが・・・音の出し方はすぐ限界が来そうに見えませんか?
電子ピアノは電子音しか出ませんので、基本的にはこのエレキバイオリンだと同じ事です。
最近の電子ピアノは改良されている
近年の電子ピアノはタッチ(鍵盤の弾き心地)も改良されていて、強弱や音の長さはコントロールできるようになっています。
以前よりも強弱や音の長さ(スタッカートのように音を短く切ること、反対に長く弾くことは可能)が調節できるようになったのは画期的な事です。
しかし、「電子音しか出ない」という事実は変わりませんので、多少の強弱(機械的なもの)や音の長さ以外にコントロールできるものはありません。
(ピアノを弾く上で大切になる「音の質」は変えることができません)
音の質のコントロールは、上級レベルにならないと必要ないと誤解されがちです。
実際にはドレミファソラシドと音階を弾くだけでも、音の質を考えて弾いたときと、考えていない弾き方とでは、全く異なって聞こえます。
音の質が整っていると、ざっくり言って「なめらかに揃い、歌のように綺麗にきこえる」音になります。
そうはいっても住宅事情もある!
上記のことはすでに広く知られていることですが、とはいっても住宅事情という難関があります。
地域柄だったり、子育て事情だったり、さまざまな理由でマンション住まいになることはよくあります。
マンションのほうが戸建より快適なことも多いですし。
ひとつの習い事のためだけに引っ越しなんてできませんよね。
どんなピアノかよりも、適齢期に習い始めることのほうがもっと大事
ピアノを習わせたいと思った時に、
マンションだからアップライトピアノは置けないor ピアノは買えない→ピアノは習わない
<<<<<<1000倍くらい<<<<<<<電子ピアノでも習い始める
です。
今は電子ピアノしか準備できない状況でも、ピアノを習うことそのものを諦めるよりも、とりあえず電子ピアノでも習い始めた方が良いに決まっています。
子供の習い事には適齢期があり、ピアノであれば4・5歳ごろ~6・7歳頃に習い始めるのが最も良いです。(2・3歳と早すぎても上手くいかない)
アコースティックピアノをすぐ買うかどうかよりも、子供にとっては適齢期に習い始められることが、最も大きなプレゼントになります。
これは聴覚や筋力などの問題があり、適齢期を大幅に過ぎて10歳ごろになると、ピアノを習い始める年齢としてはかなり遅くなってしまいます。
できないことはないですが、やはり後に大きなハンデとなってしまうので、子供の年齢は十分考慮してあげたいですね。
この先、子供に買うべき電子ピアノ 本題
電子ピアノは高ければ良いのか?
5万円くらい~上は70万・100万近いものまで、様々な電子ピアノが登場しています。
100万近いものはハイブリッド・ピアノ(メーカーによって名称が違います)と呼ばれ、単なる電子ピアノとは別次元の楽器です。
通称ハイブリッド・ピアノは主に既に弾ける大人向けで、グランドピアノを弾きたいけれど、騒音問題などからどうしても電子楽器しか無理、というケースに向いているものです。
お金がたくさんあれば、そうした高額電子ピアノを使うのもアリと思いますが、価格が高いピアノで練習したから上手くなるわけではありません。
ハイブリット・ピアノだけでなく、50万~70万ほどの高額電子ピアノも同じことです。
どの価格帯の電子ピアノでも、あくまで出てくるのは電子音ですので、子供の練習への効果は値段ほどありません。
電子機器面のハイテクさにいくら凝ったとしても、出てくるのは電子音・・・
ピアノを弾く技術を習得することを目的とする子供の場合、電子部分への投資はそれほど高額でなくても良いのです。
電子ピアノは寿命がある
冷蔵庫や洗濯機などの家電製品と同じように、電子ピアノも電化製品ですから寿命があります。100万円の電子ピアノであっても、普通の家電と同じように寿命はきますし、機械は進化するので型落ちもします。
型落ちもする、寿命もくるであろう電子機器に、どれだけお金をかけられるか、どこを妥協してどこを譲らないかという問題になってきます。
(※お金がいくらでもかけられるケースなら、何も気にすることはありません)
コストパフォーマンスが良いのは10万円前後~10万円代のピアノ
家電と同じということは、10~20年で限界がくる時期があります。
毎日練習を重ねていれば5年~10年の間に何らかの不具合が出てくることも多いと思います。毎日使う家電・機械をイメージしてもらうと分かりやすいです。
100%壊れるとは言いきれませんが、それなりに調子が下がってきますし、時代に追い付いていけなくなります。
こういうことを考慮したとき、狙い目は10万円前後~10万円代のピアノです。
これくらいの金額であれば、パソコン・洗濯機などと同じように、10年程たってまた必要であれば買い替えようという気になります。
また、使わなくなったとしても諦めがつきます。
何70万ほどする電子ピアノだと、またちょっと気分が変わってくると思います。
ピアノの場合、子供が6歳頃にピアノを始めたとして、10年後は16歳です。
習い事を辞めているか、電子ピアノでは何ともならない域に行っているかの2パターンが主です。
価格が安すぎる低質なものも数年続けて使うのは苦痛ですし、かといって数十万の電子ピアノは「ピアノの代換品」としては高すぎます。
その両方を考慮したうえで、ちょうど良いラインというのが10万代です。
子供の電子ピアノは何を重視して選べばよい?
とはいっても、10万円代の電子ピアノは本当にたくさんあります。
メーカーだけをとってもヤマハやカワイをはじめ、ローランドにコルグ、そしてカシオと、どれを選んで良いか迷ってしまいますよね。
筆者自身、どうしても夜間練習する必要があるときに使える電子ピアノを探したことがあり、そのときにいろんな電子ピアノを本気で弾き比べました。
その経験をもとに選び方のコツを書いていきます。
何よりもピアノのタッチを重視する
アコースティックピアノの代換品を前提としているとき、何よりも重視したいのがタッチです。
出せる音色の数とか、ブルートゥースの接続(その他電子接続関連)や、リズム音や録音機能、自動再生曲の数などはハッキリ言ってどうでも良いのです。
そういった機械のソフト面よりも、「弾いたときにどんな感触か(=タッチ)」
というのが一番大切です。
タッチの良さ(ともうひとつ→後述)さえクリアしていれば、あとは気にしなくてOKと言い切れます。
「ピアノに似ているタッチ」というのが一番のポイントになります。
これは自分で弾いてみた感覚を頼るしかありません。
他人に頼るよりも、できれば自分で弾き比べることをおすすめします。
他にひとつだけチェックするべき項目「同時発音数」
ほかにひとつだけ押さえておく項目があるのですが、それは「同時発音数」または「発音数」と言われるものです。商品説明として必ず書かれています。
これはピアノの鍵盤を同時に押した時に残る音の数です。
例えば下で紹介するピアノだと「192」や「256」といった音数ですが、鍵盤は88鍵なのに同時に200近く同時に押すことはない?と思いませんか?
しかし、実際にはペダルで音を残すことができるピアノの場合、同時にかなりの数の音を残しています。
200程度はかなり余裕のある数値なので問題ありませんが、これが60~90など少ない数値ですと、音数の多い上級レベルの曲(たとえばショパンのエチュードなど)を弾いたとき、音が消えることがあります。
200程あればまず問題ありませんし、下で紹介するような近年の10万円代のピアノは大抵がクリアしています。
格安電子ピアノだと数値がぐっと少ないことがあるので注意が必要です。
やはりピアノメーカーの電子ピアノが良かった
とくに決めつけることなくいろんなピアノを試しに弾いてみたところ、ヤマハやカワイの電子ピアノが一番アコースティックピアノに近いタッチでした。
電子楽器としては凄いと思う電子ピアノもありましたが、ピアノが弾けない時にピアノの代わりとして弾くことを考えると、やはりヤマハとカワイには圧倒的な良さがありました。
ヤマハもカワイも自社のグランドピアノに似せることを目指しているのがこの理由かと思いました。
ローランドも良かったのですが、このメーカーは方向性が少し違い、電子楽器としての発達を軸としているようです(ローランドはアコースティックの楽器を手掛けていません)。
先生の家や発表会のホールでヤマハなどのピアノを弾くことが多いであろう子供には、ヤマハ・カワイのほうが良いなと思いました。
_________________________
また、ヤマハ・カワイ・ローランド・コルグ・カシオあたりは海外でもすごく認知度も人気も高く、海外で電子ピアノを弾いて回った時も、日本の電子ピアノは他国のブランドよりも圧倒的にしっかりしていました。
他国ブランドのものはちょっと弾いただけで、これはダメだなと思いました・・・^^;比べるまでもありません・・・
日本メーカーは電子の技術も楽器の技術もあるんでしょう。
ヤマハ・カワイのアコースティックピアノはショパンコンクールでも使われており、スタンウェイなどの高級ピアノとほぼ同等に扱われていますから、電子ピアノも群を抜いて良いのは納得です。
ヤマハの場合おすすめ電子ピアノはCLP(クラビノーバ)
ヤマハの場合は機種名にCLPと含まれている「クラビノーバ」シリーズがおすすめです。電子ピアノのなかでもアコースティックピアノを意識して作られているシリーズなので、クラビノーバから選んでおけばほぼ間違いありません。
ただ、クラビノーバの欠点は価格面で、20万超えしている機種も少なくありません。
そのため、狙い目は「型落ちのクラビノーバ」。
型落ちといっても市場に出回っているのは近年のものですので、大きな見劣りはありません。価格も10万円代前半(上記のものは現在約13万円)から出ているので、どうしてもヤマハがよく、かつ価格は抑えたい場合は現行機種の型落ち品(スペックが下の商品)がおすすめです。
こういった型落ち品は、楽器店や電気屋さんなどの店頭で勧められることはまずないと言い切れます。
同じクラビノーバを売るのでしたら少しでも値段の高いものを売った方がお店の利益になりますので、あえて型落ち品を勧めてくるケースはまれです。
最初から予算が決まっており、価格の低い別メーカーのものと、クラビノーバの型落ち品で迷っていたならクラビノーバを勧められるでしょう。
大抵は、「子供に使わせるなら○○と言う機能がある最新機種がおすすめ(人気があります)」などと、高い方が勧められるのは当然のことです。
楽器に関しては基本・営業マンのセリフはスルーして、本当に自分にとって必要なものは?ということと、自らの弾いてみた感覚を優先して比較検討するのが得策です。
(今回の記事とは無関係ですが、例外として、中古品の場合は状態をきちんとヒアリング・確認する必要があります)
カワイの場合のおすすめはCNシリーズ
カワイの電子ピアノはヤマハに劣らない性能があるにもかかわらず、ネームバリューの違いなのかお値段はヤマハより少し安くお手頃です。
上記のCN29は現在約11万円です。
CNシリーズはヤマハだとグラビノーバにあたるものと思います。
個人的にはグラビノーバよりもカワイのCNシリーズのほうが若干鍵盤が重めで、弾き心地が良いなと思いました。
鍵盤が電子ピアノのなかでは重めなので、ピアノとの差を感じにくいです。
ピアノを持っていて、カワイの電子ピアノを予備として使っているケースはよく耳にします。
とても弾き心地が良いのにお値段はヤマハより安いのでアレ?と思いますが、値段の安さはブランド力の違いくらい(ヤマハのほうが上でしょう)で、実際の弾いた感じはどちらもいい勝負です。ほぼ好みの領域でしょう。
重めのしっかりしたタッチが好きな人はカワイのほうが気に入ると思います。
ただ、ヤマハもカワイもあくまで電子ピアノなので、普通のピアノに比べて軽いことに違いはありませんが。
ある程度重さがあったほうが、速いパッセージなんかも弾きやすいです。
ただし、出てくる電子音(ピアノの音)はカワイのグランドピアノの録音です。
この部分で絶対に電子音でもヤマハの録音が良い、こだわりたいという人は、ヤマハのほうが良いといえます。
カワイのCAシリーズは木製鍵盤でもお手頃
カワイのCAシリーズには木製鍵盤が使われていて、よりピアノに近いタッチになっています。カワイのほうがヤマハより安く約17万から購入可能です(ヤマハやもっと高いです)。
10万円代のなかでも予算に余裕があり、よりアコースティックピアノに近いタッチを希望する場合はこのCAシリーズがおすすめです。
実際に弾いてみると、やはり木製というだけあり、よりナチュラルな(ピアノに近い)タッチだな、と思いました。表面というより内面がよりピアノに近いと言いますか・・・
ピアノを弾いているような錯覚を起こす作りです。
ただ、鍵盤が木製であろうが、電子ピアノですからやはり電子音です。
タッチはピアノに似せて作られていますが、ピアノのように弾き方で音色のコントロールができるわけではありません。
あくまでピアノに似せた「タッチ(感触)」です。
弾いていて心地よいのは紛れもない事実です。
絶対に木製鍵盤のほうが良いと言うわけではなく、予算が許せばです・・・
木製鍵盤の電子ピアノの注意点
木製鍵盤の電子ピアノを選ぶか迷うとき、ひとつ注意点があります。木製鍵盤の電子ピアノは、そうではない電子ピアノに比べて打鍵音(鍵盤を押した時のコトコト・カタカタという音)が結構大きいです。
木製の鍵盤だとタッチが本格的すぎて、アップライトピアノと同等の打鍵音になることがあります。ヘッドフォンをしていたとしても打鍵音は響きますので注意が必要です。
マンションなどの集合住宅に住んでいて、
最初から真夜中やかなり遅い時間(10時以降など就寝時間後)の練習を想定している場合は、木製ではないタイプのほうが無難ではあります。
逆に日中しか弾かないケースや、階下への騒音が気にならない場所であれば木製でも問題ないと思います。
子供におすすめの電子ピアノは?結論→高すぎる電子ピアノは×
電子ピアノを買いにいって、特に子供のピアノとなると、何十万もするすごく高級な電子ピアノを勧められることは多いので、これについてはずっと前から書いてみたかった記事です。
上に書いた通りですから、50万~70万くらいする電子ピアノ、50~70万円分の価値は回収できないと思います。
最初から電子ピアノに投資はせず、様子を見るのが賢い
最初は10万円代のピアノを買って、その後は中古を含めアップライト(サイレント付きアップライトなど)にするのか、辞めてしまうのかなどを考えると良いと思います。(価格的には最初15万程なら40~50万くらいの中古ピアノなどを買い足す選択肢も残ります。また、ピアノを辞めるなら他のことに使えます)
数年も経てば子供のピアノの腕も上がりますし、辞めるか続けるかも見えてきます。
また、住宅事情・家族事情なども変わることが多いです。
もしグレードの高い電子ピアノを買うにしても、続けることが明確になったタイミングが◎
もしかなりグレードの高い電子ピアノを買うなら、ピアノはずっと続けたいけれど、アコースティックピアノは騒音問題で絶対に無理というタイミングかと思います。
この時点で、最初に購入した電子ピアノには寿命が近づいているでしょう。
また、かなり極端な話では、70万の電子ピアノをひとつ買うより、20万の電子ピアノを3回買った方が、より最新の機能を使えますし、新しいもののほうが弾き心地も良いです。
3回買う人は現実的にいないと思いますが、最初15万のものを買って、その後45万のピアノを買った方が良いと思います。
現在の70万の電子ピアノより、10年後の45万のピアノのほうが圧倒的進化があるからです。
セールス文句を鵜呑みにしないで
電子ピアノは電化製品・楽器の両方の性質があるため、分からないと思われると特に、店員さんは大抵高いほうを勧めてきます。電気屋さんなどでは、店員さんが楽器についてよく知らないケースもあるかもしれません。
また、新品の電子ピアノはどこで買っても製品は同じですし、大手メーカーの商品であれば、問い合わせ等はメーカーへ直接することができます。
買う側が特になる買い方をして何ら問題ありません。
今回は、お店で売っている人は絶対に言わないであろう本音を書きました。
店員さんも内心思うことがありながらも、お仕事として売っているかもしれません。
これから子供さんに電子ピアノを買おうと思っている方の参考になりましたら幸いです。
ピアノ曲の難易度解説の記事も書いてます。